2020年06月30日

バカンス・4






梶原からメールが届いていた。

『せっかく誘ってくれたのに、ゴメンな。
もしかしたら木曜日は1日空くかも…
そしたら、そっち、行ってもいいかな?』

イツキは『うん』と返事をして、スマホをぱたりと伏せる。
今日は月曜日。黒川が来るのが土曜日。途中、梶原と遊べるのも良い。
それ以外は、一人で過ごしてみよう。
独りきりの時間で、イロイロ乱れた自分自身を、少し思い直してみよう。




などと思った矢先だった。



途中停車の駅で乗って来た客が、イツキの隣りの席に来た。
窓側にいたイツキはちらりとそちらを見る。
半袖ポロシャツが良く似合う、爽やかな好青年。20代前半といった感じ。
「…スミマセン」と男はイツキに声を掛けて、イツキの頭上の網棚に小さなスーツケースを乗せようとする。


「………わっっ」
「……ひあッ……」


男はバランスを崩し、荷物を落とし、あわやイツキに直撃という所で受け止める。
イツキは驚き、変な声を上げ、咄嗟に身体を窓側に反らせた。


「…ご、ごめんなさい、ぶつかった?……だ、大丈夫でしたか?」
「………大丈夫です。……当たってないです……」


男は荷物を抱えながら平謝りし、網棚に乗せるのは諦めて、足元にスーツケースを置く。
イツキは何事も無かったですよ、という風に……息を整え、窓の外に目をやる。




突然目の前に被さった、荷物を抱える男の腕は、力強く、たくましく
おまけに、……不快ではない汗の匂いが鼻を掠めて、………イツキは


酷く、慌てた。




posted by 白黒ぼたん at 21:38| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
あらま
いっちゃんときめいちゃった!
黒川さーんいっちゃんが解き放たれてますよ〜
Posted by はるりん at 2020年07月01日 05:32
初日(しかもまだ移動中)からこんなんじゃ
先が思いやられますな。
Posted by ぼたん at 2020年07月02日 23:02
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/187651449
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック