2020年07月06日
バカンス・7
眠る前に、黒川と電話が繋がる。
夜を別々に過ごすことなど珍しくもないが、本当に場所が離れているのだと思うと少し、…変。
「……いい旅館だね、古いけど新しくて。お部屋もベッドで、いいね。少し歩くとプライベートビーチがあるんだって、……泳がないけどね、ふふ」
『…海と風呂が売りの宿だからな…』
「晩ご飯も美味しかったよ。別館にレストランがあってね、そこに用意されてて。お刺身が…山盛りで……」
イツキがよく喋るのは、やはり少し、落ち着かないせいなのか。
知らない土地にたった一人きりでいるというのは、たとえバカンスだと言われても、寂しくて不安になるものだろう。
『…歩いて回れる辺りで、色々…、見られる場所があるようだぜ。…まあ、適当に、遊んでいな……』
「ん。……わかった。………マサヤ、来るのは金曜日?」
『ああ、じゃあな』
通話を終えるとシンと静かになり、耳が痛くなる。
普段、マンションの部屋だって、そう都会の喧騒が聞こえてくる訳ではなかったけれど……、それでも静寂の質が違う。
うっかりすると、泣きそうになってくる。
けれど、これくらいの孤独はすでに何度か経験済み。
多少の不安も、心配事も、それが目の前にやって来て避けられない状況になるまでは、考えたって仕方が無いと知っている。
とりあえず、もう寝てしまえと、ベッドに入る。
そして、明日、番頭見習いの竹本が案内してくれると言う漁港の、近くの、磯焼の店のことを
夢に見る程、考えていた。
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それは黒川も一緒ですね
いつも一緒の人が居ないというのは
なんだか落ち着かないものです
でも食事を楽しみにしているいっちゃん、可愛いですね!
どんな時でも楽しいこと考えられるのは
生活の知恵?