2020年07月13日
バカンス・12
土産物屋や雑貨屋をいくつか回り、最後にイツキは「おでん・地酒」の店に入る。
あまり沢山頂いては夕食が入らなくなると、一応、心配し…、お勧めの一皿と冷酒のグラスが乗った「ちょい呑みセット」を注文する。
やがて運ばれて来た地酒のグラスは、下の升にも溢れるほど、なみなみに酒が注がれていて…思わず、にやける。
グラスを持ち上げることも出来ずに、口から、行く。すっきりとした辛口の酒で、するすると飲めてしまう。
「……いやいや。……今日は飲み過ぎない。旅館の夕食だって、すごい、楽しみにしてるんだし。………ああ、俺、……食べてばっかりだ……」
イツキは小さな声で呟く。本当にこの旅行は食べて、飲んで、お風呂に入ってと…、のんびり過ごし過ぎていると思う。
こんなに気ままな時間を過ごして良いのかと、少し、自分を戒めるのだけど……
週末には…、『仕事』があるのだという事が、胸の奥で微かに痛む。
「………それがあるから…、……好き勝手にさせてくれてるのかな…。……遊んだ分は働け、とか……言うのかな。
………じゃあ、もっと、ぱっと遊んでも良いって事かな……」
そんな事をぼんやりと考える。考えている内に、ちょい呑みのグラスは空になる。
今の時間は午後3時。まだ、旅館に帰るには早い時間だと…、…イツキは地酒のお替りを頼んだ。
「……いいね、お兄ちゃん。昼から、酒盛り?」
一人の男が、イツキに声を掛けて来た。
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