2020年07月18日
バカンス・17
路地裏に入った時には当然気がつかなかったが…
丁度真上に、街の広報スピーカーがあった。
折しも時間は夕暮れ時、17時。
カチリと何かスイッチの入る音がしたと思ったら、すぐに
頭上から大音量で「夕焼け小焼け」の曲が流れて来た、
一瞬で場が和んでしまい、2人とも、ハタと我に帰る。
「……帰んなきゃ……」
「…冗談だろ?……これからお楽しみじゃないのか…」
「…今日の夕食、ローストビーフ食べ放題なんです…」
「………ハァ?」
イツキの言葉に男は少し間を置いて……突然、吹き出して笑い出す。
ほんのちょっと前まで身体中から色気を垂れ流し、ウワバミのように男を飲み込もうとしていた男娼が、
ただの普通の男の子に戻ってしまった。
結果、イツキは男と離れる事が出来た。
「……あんた、面白いな。なあ、まだこの辺にいるのかよ?明日は?」
「明日は用事があります」
「…俺、昼間はたいていさっきの店にいるからよ。来いよ。ローストビーフより美味いもん、食わせてやるぜ」
別れ際、男にそう言われるも、イツキは曖昧に笑ってお断りする。
そして、目の前に止まったタクシーに乗り、旅館に帰るのだった。
「…ヤバかった! 俺、もうちょっとで流されちゃうトコだった。
ああ、でも、ちょっとそれでも良かった…かも。
いやいや、でも、いや、駄目。
そんなにホイホイ、エッチなんてしないんだから!」
イツキの独り言は若干声が大きく、タクシーの運転手に丸聞こえだった、
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