2020年08月29日
必要悪
変わり映えのしない穏やかな時間を過ごすイツキと黒川だったが
その中に、ほんの少しの毒が混じるのも、また日常だった。
黒川の仕事柄、どうしても避けられない付き合いというものがあり
……イツキが呼ばれる。それは、最低限の必要悪で、イツキも諦めていた。
きっちりと黒いスーツを身に纏い、指定されたホテルの部屋に向かう。
まるで知らない得体の知れない男が相手ではない。それなりの立場の人物だ。
命の危険は無いし、時間通りに終わらない、ほどの事もない。
好き嫌いや、趣味の悪さは……まあ別の問題なのだけど。
『…イツキくん、こんなに…セックス好きなのに、どうしてもっと…しないの?
勿体ない。……こんなに、………スゴイのに………』
身体の穴を弄られ濡らされ広げられて、最大級の誉め言葉を囁かれるが、返事をするには酸素が足りなかった。
途中、黒川の顔を思い出しては嫌だな…などと思ったが、そんな暇も無かった。
ありがたい事に
始まってしまえばイツキは、止まるまで、止まらなかった。
終わって、少し眠って、それから全ての匂いと気配を洗い流して
呼んで貰ったタクシーに乗って、黒川の事務所へと帰る。
すでに外が白み始める時間。事務所には黒川が一人、仕事をするフリをしていた。
「……オツカレ。……朝メシでも行くか?」
「………焼肉がいい…」
「この時間にか?…はは。…まあ、いいか…」
そう言って二人は、外へ出て行くのだった。
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