2020年09月05日
寿司割烹なか井・4
「いいね。俺はそんなイツキくん、好きだよ。いちいち惑わされる方が、お子様なんだよ」
一応褒めているらしい松田の言葉に、少し、イツキの気も晴れる。
「林田も直に冷めるデショ。……ま、あんまり素人に手、出しちゃ、駄目だぜ?」
イツキは…、若干拗ねた様子で唇を尖らせ、……こくんと小さく頷いて見せた。
途中、小さな牛ヒレのステーキを挟んで、最後はお造り船盛りがテーブルに置かれる。
酒はビールから日本酒に替わり、その頃にはイツキの機嫌もとりあえず戻る。
薄く切られた白身魚の正体を探り、わさびを付け過ぎたと言って顔を顰め、貝は苦手と、取り分けた皿を遠くにやる。
「………俺はね…」
「…はい?」
「……全部ひっくるめて、好きなんだよね」
「………お刺身ですか?」
「違う」
そこはキッパリと否定し、松田は笑いを堪え、酒を飲み、気を取り直す。
「イツキくんだよ。全部。……エッチなところも、時々すっとぼけた事するのも。
それと、そんなイツキくんを囲っている黒川さんも。全部、気に入ってる」
「………松田さん。マサヤが好きって…、コトですか?」
「まあ、そんなトコかな。……どうやってイツキくんみたいな子、育てたのかとか…、興味がある。
…溺愛してるかと思えば、放置でしょ?……ふふ。黒川さんも、相当の変わり者だよね」
好き、にも、興味がある、にも、様々な思惑や熱量があるのだろうが
松田が黒川を好意的に思っているのは確かなようだった。
イツキは、面と向かって黒川を好きという人間にそう出会った事が無かったので
松田の言葉に新鮮に驚いた。
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いつきも驚いたけど私も驚いた笑
それ以上があったらビックリしますよね!!