2020年10月07日
記録・5
「……佐野っち、手、離して…?」
「……俺がココで思い出すのは…お前の泣き顔ばっかりだ。…迎えに来ると、ヤられた後のぐっちゃぐちゃのままで……頭から毛布被って、泣いてた……」
「それ、すごい前だよ。……その後だって、佐野っちとここ、来たでしょ?」
佐野はイツキの二の腕を掴んだまま、耳元で熱っぽく語る。
語りながら身体を押し付け、どれだけ今、自分がイツキを欲しがっているのか直に感じさせようとする。
「…ああ。イツキ。…俺ら、前は…もっと一緒にいたよな。……最近は、あんまり会えなくて…
俺は寂しいよ。……なあ、イツキ。………な?」
何が「な?」なのか解らないが、気持ちは伝わる。
うっかり、流されそうになるイツキだったが…
佐野がぐいぐいと身体を押し付けてくるお陰で、手に持っていた封筒がガサリと音を立てた。
それは、黒川の使いで、西崎の事務所から預かって来た封筒で
それを持って帰らなければいけなかった事を、寸でで思い出す。
「駄目。佐野っち。俺、お使いの途中だった。すぐ帰らないとマサヤに怒られちゃう。
……佐野っちと寄り道して来たなんて知れたら、それこそ大変だよ?」
「…………う…」
もっともなイツキの言葉に、佐野は狼狽える。
そうこうしている内に、後ろから入ってきたカップルがイツキ達を気にしながら……
空いていた部屋を指定してしまい、残念ながらホテルは満室になってしまった。
どうにか佐野と別れ、イツキは急ぎ、黒川の事務所に戻る。
事務所では黒川と一ノ宮が仕事中だった。
「…遅かったな。西崎の所で遊んで来たのか?」
イツキから封筒を受け取ると、ふんと黒川は鼻で笑い、そう言った。
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すんでのところでセーフでしたね
佐野っち残念でした