2020年10月23日

食事会・1









「明日は出掛けるぞ。予定を空けておけ。……ホテルで、飯だ」
「…………『仕事』?」




出掛けに、黒川にそう言われ、イツキは不安げな表情を浮かべる。
最近、以前のような『仕事』は殆ど無いとは言え、まるで無い訳ではないのだ。

黒川は、伺うように見上げ視線を揺らせるイツキを見て、ふふ、と笑う。
嫌な事を言って、嫌な気分にさせるのも楽しいのだが…と、子供のような事も考えるのだが

あえて、コトをややこしくして面倒を起こす気もない。



少しは学んだのか。




「違う。…松田だよ。奴とは変な繋がり方をしたが、まあ一度、きちんとした場を設けるか、って話しがあってな。
ホテルの高級中華は趣味じゃないが…向こうのセッティングでな…」

「……松田さん…!………マサヤ、松田さんと、仲良しになったの?」

「仲良しとかいう話しじゃないだろう。ガキかよ。真面目に仕事の話しだ。一応、通さなきゃならん筋もある」





イツキは黒川のジャケットをハンガーから外し、黒川に渡す。
それに黒川は袖を通し、鏡を見て、髪の毛をちょいちょいと直す。
イツキは、黒川の肩に付いていたホコリを指で摘み、…黒川と松田のコトを、思う。
……これ以上親交を深めてどうするんだと……軽く、戸惑う。






「…18時にロビーだ。石鹸屋の後でも間に合うだろう?俺は明日まで戻れないから、直接向かう。
……きちんとした格好で来いよ。じゃあな」




そう言って黒川は、バタンと音を立てて、部屋から出て行った。






posted by 白黒ぼたん at 22:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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