2020年11月03日
食事会・終
「…… 別に俺、何もしてないよ? マサヤに言われた通りにスーツ着て
ホテルに来て、ご飯食べただけじゃん…」
何をしても黒川の不興を買うと、イツキは若干むくれ、そっぽを向く。
エレベーターはフロントの階に着き、黒川が降りイツキも後に続く。
黒川は用事があるのか、フロントに行き、何やら話をしている。
イツキは少し離れた所にぽつんと立つ。
イツキが特別、松田親子に色目を使った訳ではないことは、黒川も知っている。
色目なぞ使わなくとも、滲んでしまうのだ。イツキは、何かが。
フロントで書類にサインをしながら、少し離れた場所に立つイツキを、ちらりと見る。
相変わらず、黒いスーツがよく似合う。女ではないのに男臭くなく、異質だ。
『仕事』に出していた頃の幼さは無くなり、今は落ち着いた、しっとりとした艶を纏っている。
連れて歩くにしろ、少し考えなければいけないのかも知れない…と黒川は思う。
こんなナリで、売り物では無いと言う方が、無理な話。
「おい、行くぞ」
フロントから戻って来た黒川はイツキに声を掛け、足早に歩き始める。
イツキは「…はい、はい」と小さく返事をして、黒川の後を付いて行った。
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