2020年11月24日
思い出し笑い
「遅くなりました、マネージャー。お疲れさまです」
「ああ、お疲れさま、関くん。先に始めちゃってるよ」
百貨店近くの気軽な居酒屋で酒を飲んでいたのは、茗荷谷。
遅れてやって来たのは関と言う、以前、茗荷谷と同じ部署で働いていた若い男。
関は今は荷物の搬入を管理する部署にいるのだが、先日、違法駐車の車の件で顔を合わせ、久しぶりに酒でも飲もうという話になったのだ。
百貨店勤務の者には馴染みの居酒屋は、銀座という場所に似合わず、安くて早くて美味い、大衆の味方のような店で
特に飲み会の予定が無くても、独身の茗荷谷などは、ほぼ毎日ここに通っていた。
二人、適当に飲み、適当に食べ
近況や共通の知り合いの結婚話、会社の経営状態。今の上司の愚痴などを零す。
茗荷谷と関は、歳は10ほど離れているが、なかなか気が合うらしい。
休みの日には近場の神社仏閣を巡り写真を撮りまくる、という趣味も同じだった。
その関が、途中、……ふいに笑い出す。
よほど酔いが回ったのか何なのか、茗荷谷がぎょっとした目で伺い見ると
関は、いやいや、と手を前にやり「…すんません、ただの思い出し笑いなんです…」と言い
それでも笑いが止まらなくなってしまったのか、目に涙を浮かべるほど、笑い続ける。
「……いや、…すんません。マジ…、急に思い出しちゃって。
……マネージャー、2階の新しく入ったハーバルって店の男子店員、知ってますか?」
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/188153700
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。
この記事へのトラックバック
http://blog.sakura.ne.jp/tb/188153700
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。
この記事へのトラックバック