2020年12月08日
断片・1
しばらくは何も無く。
そうは言っても年の瀬まで数週間に迫り、黒川もイツキも、仕事が落ち着かなくなっていた。
2人は普段は、別々の部屋で寝ていた。
寝る時間も、起きる時間も、違い、うっかりすると一日、顔を合わせない日などもあった。
真夜中に突然黒川が、イツキの眠る「巣箱」に入って来た。
一人で寝るにも狭い場所。コトに及ぶなど、もってのほか。
「…………マサヤ。………お酒、臭い………」
「…………………ああ…」
珍しく酔って帰って来た黒川は、どうにか無理やりイツキの隣りに横になる。
酒と煙草の匂い。……これみよがしに甘ったるい、香水の匂い。
黒川が外で、何をして来たのかなどと、聞くつもりもないけれど。
誰と重ねたか知れない唇を、重ね。
まだ感触も消えない指先で、イツキの髪を梳く。
ふいに黒川は起き上がり、巣箱から出て行く。
イツキは…、追いかけて寝室に行こうかと思ったのけれど……
眠たすぎて、無理だった。
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