2020年12月09日
断片・2
『……お願い! イツキくん。 これ、渡してくれるだけでいいの!
後は私、頑張るから! ね、お願い!!』
仕事帰り、イツキは黒川の事務所に寄り
ユウに、そう言われて預かったメモ書きを、一ノ宮に渡した。
メモ書きにはユウの連絡先が書かれていた。
「………ユウさん。………ああ、東京駅のショップの時に一緒にいた女性ですね。……黒髪ストレートの方?」
「そうです。…ユウさん、一ノ宮さんのこと素敵な人って言ってて…。……あの、どうしても、知り合いになりたいって…」
以前、イツキが小野寺に絡まれた時にあれこれ立ち回ってくれた一ノ宮を見て、ユウはすっかり心を奪われてしまったらしい。
素性も知れない男にほんの数分会っただけだが、その僅かさが、逆にミステリアスで興味を惹くのか。
「…ごめんなさい。困りますよね、こういうの…」
「いえ、構いませんよ。お預かりしておきます」
「……垂らし込んで、どこかに売ればいい。新しい店で、若い女を欲しがっていただろう。……若くもないか、ハハ」
横から、黒川がどうにもくだらない茶々を入れる。
勿論冗談なのだろうが、黒川が言うと、そうとも聞こえないトコロが怖い。
イツキはぎょっとした顔になり、黒川を見遣る。
「雅也」
一ノ宮は黒川に顔を向け、軽く睨み、諫め
イツキには「大丈夫ですよ」と、穏やかな笑みを浮かべた。
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