2020年12月11日
断片・4
茗荷谷は真面目な男で
仕事一筋。
イツキの事を目で追ってしまうのは
女性ばかりの売り場に入った、若い男性店員で
どうにも危なっかしく、何か問題を起こしては大変…と
気に掛けているためだと、思っていた。
なので、以前の部下で今は良い飲み仲間の、関が
酔いも回った焦点の合わない目で、突然
「ハーバルのあの子とセックスとか、アリだと思いません?」
と言って来た時には、飲んでいた日本酒を鼻から吹き出しそうになった。
「……関くん、酔っ払ってますね。……ハーバルのあの子って…岡部くんでしょ?……男の子ですよ?」
「そう。岡部…カズキ……?……俺、ぜんぜん……イケると思うんすよね…」
「…イツキくんです。…関くん、男の子ですよ?……そんな、変態じゃあるまいし」
世間一般の反応を見せて、茗荷谷は呆れたように笑う。
それでも一応、イツキと、そうなった時の想像をしてみる。
「……俺もね、変なことばっかり考えてると思うんすよ。でも、最近、妙に気になっちゃって。
…この間も、カズキ、チャラそうな男と一緒に歩いてて…
……あれ、こいつら…、……デキてんのか……って、…じゃあ俺もワンチャン、イケるんじゃないかなって
………ハハハ、そう思わせるトコ、ありますよねー」
関はそう言って自嘲気味に笑い、ヨコシマな考えを押し流すようにビールを煽る。
茗荷谷は何を考えていたのか鼻の穴を膨らませ、適当な相槌を打って、こちらも日本酒で押し流した。
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