2020年12月23日

特別な日・7







真夜中を過ぎた頃、黒川が部屋に帰ると
リビングに、イツキの姿があって、少し驚いた。

イツキは「仕事」の後は、ことさら自分を見られるのを嫌がっていた。
風呂で、隅から隅まで男の匂いを洗い流し、巣箱に籠り、しばらく出て来ないものかと思っていた。

黒川に気付き、イツキは顔を上げ「おかえり」と言う。
黒川も、「ああ」と言い、キッチンで水を一杯飲む。

見ると、リビングのテーブルには、棚の奥に隠してあった大吟醸が置かれ
イツキはそれをコップに注いで、ひとり、酒盛りをしていた。




「…珍しいな。………飲み足りなかったのか?」
「マサヤも飲む?……これ、水みたい」
「……ああ」


黒川がソファに座ると、イツキは空いているコップに酒を注ぐ。
少し、覚束ないのか…、…酒は少し零れ、テーブルを濡らす。
それでもイツキは一向に構うことなく、「はい」と黒川にコップを手渡す。
………急な「仕事」に怒る風でも、拗ねる訳でもなく。何か……奇妙な……感覚。

黒川はコップに口を付ける。イツキを見ると、イツキもコップの残りをぐいと煽り
また、それに、酒を注ぐ。

「………飲み過ぎだろう」

そう言って黒川が笑うと、イツキも静かに微笑んで








「俺、今日、誕生日だったんだ」

と、言った。





posted by 白黒ぼたん at 12:09| Comment(5) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
うーん、、残念な男だな黒川
Posted by ひとみん at 2020年12月24日 08:32
初めまして。
いっちゃん、お誕生日おめでとうございます!
もしかして、二十歳…でしょうか?
Posted by ryo at 2020年12月24日 22:54
これは泣いてしまう…
わたしが。
ばかやろー
Posted by aki at 2020年12月25日 00:38
ひとみんさま
はいー。黒川。間が悪いと言うか、日頃の行いが悪いと言うか…
駄目駄目ですね。


ryoさま
初めましてありがとうございます!
ふふ。そうです、いっちゃん二十歳です。
一生ものってヤツでした。笑


akiさま
黒川に期待していた訳ではないけれど
それでも何か特別な日になるんじゃないかと
ドキドキ過ごしていたいっちゃん。
切ないですね。
Posted by ぼたん at 2020年12月25日 20:17
これは切ない😢胸がキューってなり思わずのコメントです😢

初めてのコメントです
いつも楽しく拝見させていただいております
応援してます
Posted by もと at 2021年01月22日 16:16
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