2021年01月11日

男子会・3








「…あれは…ちょっと……、嫌な事を言われて……」
「嫌な事?……かっ…彼女と喧嘩とか…?」
「彼女なんていないです!……あの、えっと……家の人…っていうか……」


不意の電話で男に抱かれに行くことになった状況を、どう説明すれば良いものかイツキは困る。
もちろん、正直に話す必要などないのだけど、真面目に心配をしてくれる茗荷谷に対して
つい、イツキも、真面目に応えてしまう。

その、困る様子が
さらに茗荷谷の心配を煽る。




「……家の人?……本当に?……。岡部くん、…前に岡部くんが店の裏から、車に乗って行くのを見たよ。
……ちょっと、怖い感じの男と一緒に……。
大丈夫かな?……何か問題に、巻き込まれてるんじゃないのかな……」




茗荷谷がぐっと身を乗り出す。
少し距離感を間違えたか、いやに顔が近づいてしまう。
ハタから見れば、まるで壁側に押し付けて、告白でもしているような勢い。

イツキは、さらに困る。
曖昧な、下手な誤魔化しなどしても、この男は自分が納得いくまで追求をして来そうだと思った。





とりあえず、ひとつ、息をついて
ニコリと、綺麗に笑う。





「…大丈夫です。…ご心配掛けて…すみません。
俺、…家…で…ちょっと仕事を手伝ってるんです。電話は、その話です。
車は……、前に迎えに来て貰った時かな。
家の人、怖い感じがして…アレなんですけど。……大丈夫です、本当に」




そう言って、イツキは、もう一度微笑んで
ぺこりと頭を下げて、その場から立ち去るのだった。







posted by 白黒ぼたん at 22:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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