2021年02月08日

無用なモヤモヤ







焼肉屋の後はホテルに行った。
歩いて数分の距離に自分たちの居住があるのに
わざわざ、そんな場所を選ぶのは

激しい声や物音を立てたり、何か、汚してしまったり…と
……それ、に、没頭したい時に、よく利用していた。


まあ、今日は、さほど酷くもなく。




「…………何?………マサヤ……」
「……いや…」

一度終わって、うつ伏せでベッドに横たわり、呼吸を整えるイツキの
背中に、黒川は手をやる。
肩から、背中。少し、尻の方へ行き、また背中に戻る。
まだ感覚が残っているイツキはそれだけでビクリと反応し、思わず、変な声をあげそうになる。

「………くすぐったいんだけど……」
「…………ふん」

顔だけ横を向けて、困ったようにイツキが言う。
黒川は鼻を鳴らして、笑う。





先ほど、事務所で頭を下げていた男は、借金で首が回らなくなり
後はどう処理しようかと、思いあぐねているところ。
実は、もうすぐ中学生になる息子がいるらしく、なかなか可愛い顔をしているのだと聞く。
……引き入れて、手懐けて……

「イツキ」のような子を作っても、良いかもしれない。

なにせイツキはもう、あまり、外には出せない。……出したくは、ない。





「…お前はもう、……無いからなぁ……」
「………え?………何…?」




そうして黒川は無用なモヤモヤを、イツキに残すのだった。





posted by 白黒ぼたん at 16:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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