2021年02月18日

思い出話









イツキはトイレで用を足し、手を洗い、鏡を覗き込む。
顔が赤く目も潤んだように見えるのは、多分酔っているせいだと思う。
不安定なままに佐野を呼び出し、セーブも掛けずに飲み過ぎてしまった。
それでも、佐野は、取り止めのない話をよく聞いてくれた。いつもいつも


佐野は、自分に、優しいと……イツキは本当に思っていた。



「……。お、おおう。大丈夫か、イツキ…?」
「ふふ。…ちょっと飲み過ぎたかもね……」



少しふらつきながら席に戻ったイツキは、そう言って笑う。
佐野は、手のひらの中の小さなゴミを、ポケットに押し込む。


「……も、もう帰るか?……とりあえず、水でも飲めよ」
「うん。………佐野っち、…ありがと…」
「…え?」

「俺、いつも困ったことがあると…佐野っち頼ってるかも。
マサヤのこととか、色々。…だって、佐野っちは、俺のこと全部、知ってるから。
俺の、最初の頃から、全部」



イツキは佐野が用意してくれた水のグラスを手に持ち、思い出話。
妙に感傷に浸るのも、酔っているせいなのだが。



「……まあな。お前の、ぐっちゃぐっちゃな時も、見てるからな…。社長の次に、お前に近いぜ」
「そうだよね。……ありがと。佐野っちがいてくれるってだけで、少し、安心する」




イツキはそう言って、もう一度綺麗に笑って

水のグラスに、口をつける。






「……イツキ…」






posted by 白黒ぼたん at 21:18| Comment(1) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
佐野!!
君に罪悪感はないのかい?
みんなのとこに連れていくのはやめてくれ〜!
Posted by はるりん at 2021年02月19日 07:03
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