2021年04月09日
長話
「…ミカさんとイツキくんって、ずっと一緒に仕事をされているんですか?」
「いえ、まだ一年にもならないです。…向こうの本社の時に、イツキくん、ふらっと働きに来て…」
ミカと茗荷谷は意外と長話。
やがて休憩室の電気が落とされてしまい、二人は場所を近くの居酒屋に移す。
いつも気丈に振る舞うミカも、ひとり慣れない土地で仕事をしているのだ。
一緒に働くイツキが不調となれば、やはり、不安で堪らないのだろう。
「イツキくん、……おウチがちょっと複雑らしくて……、それでも仕事は頑張ってるんですよ。
接客は…面倒臭いお客様がいたりもするけど…、でも楽しいって言ってたのに……
………どうしちゃったのかな、本当…」
「環境が変わって、疲れが出る時期と言うのもあるのでしょうけど…、……そうですねぇ……」
イツキの様子が今までと違うことは、茗荷谷も薄々感じていた。
とかく目につき、その気はなくとも気にしてしまう子だ。つい、目で追ってしまう。
ミカの言う通り最近はどこか淡々と冷めた印象で、……儚げだと、思っていた。
「直接、聞いてみたりはするんですか?」
「…んー。最近、どう?って聞いても、大丈夫です、って。そんな感じで。……あんまり突っ込んだ事も聞けないじゃないですかぁ…」
「まあ、そうですよね。……そうですねぇ……」
ミカはヤケ酒のようにビールを煽り、茗荷谷は静かに日本酒をすする。
そう言えば…関が、妙な事を言っていたな、と思い出す。
イツキが関を好いているなどと本当の話なのだろうか…、キ………キス………などと、そんな…
関が妙な事を言い、イツキを困らせているのでは無いだろうか。などなど。
「………あまり周りが騒いでしまっても、本人、言い出しにくいこともあるでしょう。
ミカさんは普段通り、明るく接してあげるのが良いかと思いますよ。
あなたまで思い悩んで暗い顔になってしまっては、落ち込むばかりですよ。…ね」
そう言う茗荷谷に、思いがけず
ミカはドキンとし、慌てて、それを打ち消した。
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