2021年04月19日
緩くて脆い
「おはよ! イツキくん」
「…………おはようございます」
石鹸屋…、…ハーバルの日。
この日はイツキはきちんと仕事に行き、開店準備と午前中の作業をこなし
昼過ぎになり時間差でミカが仕事に入る。
一見、いつもと変わらぬ様子のイツキにミカは安堵し
ニコリと笑って、言わずもがな肩をバンバンと叩く。
「……ミカさん、ごめんなさい。……昨日は………」
「あはは。まーそういう時もあるよね。でも、次はアウトだからね!」
「……はぁい……」
あまりに「夜」の時間が長すぎると、こちらに戻って来るのが億劫になるのだが…
来てみればやはり、仕事は楽しいしミカは優しいし。
黒川に振り回されてばかりの生活より、もっと何か、違うものを見つけたいと
一応、思ってはいるのだ、まだ。
「でもホント。何か困ってることあるなら、話、聞くよ?
……そうだ! 今日、ご飯行こうか?……ユウちゃんとかも誘って、賑やかにするのもいいね」
「あ。ごめんなさい。……今日は予定があります」
「んー………?」
「ああ、でもちゃんと、明日の仕事は来ます!大丈夫です!!」
何やら忙しい様子のイツキに、ミカは冗談半分、怪訝な顔を浮かべた。
やがてイツキの終業時間となり、イツキはハーバルを出て、スタッフの詰め所に向かう。
イツキの姿を見掛けた関が、休憩所の向こうから小走りでやって来る。
「………お、おおう!イツキ、今、上がりか?………なあ、今日………」
「おつかれさまです。関さん」
関の誘いを聞くこともなく、イツキはぺこりと頭を下げて通り過ぎた。
この日はミツオと会う予定だった。
少し前に髪の毛を切りに行き、その時に、つい約束をしてしまった。
あちらとこちらのバランスを崩しているイツキは、色々と、緩くて脆い。
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