2021年04月23日

話しにくい話









突然の松田の来訪に黒川も一ノ宮も少し驚いたが
まあ、仕事で付き合いのある、どちらかと言えば好意的な相手。
業務上の相談か四方山話か、とりあえずソファを勧め
丁度手の空いた黒川は、グラスに洋酒を注ぐ。


「…何か、あったか?……契約は来月だったよな。一度、一ノ宮と向こうに行ってから…」
「ああ、その話じゃないですよ。……そっちは万全なんで。……いや」


黒川は松田の前にもグラスを置く。松田はぺこりと頭を下げ、それを貰う。
くっと一息で飲み、ふうと息をつく。
何か、話しにくい話でもあるようだ。
少し言葉を探し、それでもアレコレ考えるのは止めだという風に、今度はふんと鼻で息を付く。




「黒川さん。あんた、……イツキちゃんと……どうなのさ?」
「…………は?」
「上手く、やってんの?」



なんだ「イツキ」の話かと、黒川は呆気に取られる。
少し付き合わせてやれば浮かれ上がり、貸せだの、売れだの……
言い出す輩は割と多い。よくある事だ。



「関係ない話だろう。…また、接待に使いたいのか?
……条件次第だな…」

「……あー…、いや。……ここんとこチョイチョイ、イツキちゃんから連絡貰うんだけど…
……何度か、会ってるんだけど。……勿論、アリで……」

「………は…?」





黒川は静かに対応するも
内心は、穏やかではない。






posted by 白黒ぼたん at 18:00| Comment(3) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
このサイトは日々の楽しみのひとつです。
たまに頭から読み返します。
Posted by a at 2021年04月26日 06:49
ありがとうございます。
頭から読み返し…恥ずかしいけど嬉しいです。
これからもお話
楽しみにしたって下さい♪
Posted by ぼたん at 2021年04月26日 19:06
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