2021年04月30日
わからずやさん
「解らんのはお前の方だろう。突然押しかけては、くだらん話をゴタゴタと。
イツキの様子が良かろうが悪かろうが、何の問題もない。
あれは、俺のものだ。関係の無い奴が口を挟むな」
黒川は啖呵を切って松田をひと睨みする。
…多少、松田の言葉に考えさせられる所はあっても、今それを認めるほど素直な男ではない。
ふんと大きく息を吐き、残っていた缶ビールを煽る。
「…ああ、そうかい。そりゃ、悪かったな。失礼したよ。
俺はイツキちゃんが心配だったから話しに来たんだか、あんたには、くだらない話しだったな。
イツキちゃんが俺や、他の男や誰やらと
……何か理由があったとしても……、
遊び回ってココロもカラダも傷つけて、ズタボロになって挙句、逃げるように姿を消したとしても
俺が口を出す事じゃねぇな。あー、ハイハイ」
松田は
これ以上黒川と話していても埒があかないと踏んだか
投げやりにそう言って、頭をポリポリとかいて、呆れたように大きくため息をついて 「じゃー、帰るわ」と席を立つ。
黒川はもう何も言わず、事務所を出る松田を一瞥するのみ。
静かに事を伺っていた一ノ宮は、「ああ松田さん、事務的な話が残っています」とか何とか言い、松田の後を追って行く。
事務所に一人残された黒川は
もう一度盛大に、ふんと、息をついた。
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