2021年05月02日
苦笑
松田がイツキと会ったのは二日前の事だった。
それ以前にもいやに身体の緩い、もとい、少しナーバスな様子が気にはなっていた。
「ご飯でも食べようか?」と誘えば簡単に応じ
行った先がホテルの部屋でも、特にゴネる事もなく。
『……イツキちゃん、何かあった?最近、……違うね』
『…そうですか?…まあ、なんとなく。…流れに逆らうのに、疲れちゃったのかな』
『疲れちゃったかぁ…。ああ、風呂でも行きたいね、ほら…』
『湯〜らんど極楽!…懐かしい。…行きたいですね…』
松田の腕の中でイツキは身体の向きを変え、少し伸びをする。
動かした足が松田の足を擦るのはわざとなのか。
淡いスタンドの灯りに浮かぶ白い素肌が艶めかしい。
『…向こうで、一人で暮らしてたのも…今思うと、楽しかったな。
…いつか迎えに来てくれるって、ずっと思っていられるのって、良かった…』
『俺、もうじき戻るんだよね。……イツキちゃん、一緒に来ちゃうか?』
松田がそう言うとイツキは返事の代わりにニコリと笑って
もう一度、松田の腕の中に、潜り込んだのだ。
「……松田さん」
松田が黒川の事務所を出て少し感傷に浸っていると
後ろから追いかけて来た一ノ宮が声を掛けてきた。
顔を見合わせると何故か二人とも
わからずやのあの男に困ってか、苦笑を浮かべた。
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