2021年06月06日
小糠雨
もちろんイツキとて今更「仕事」をしたい訳ではない。
しかも相手は嫌な、少々趣味の悪い爺いなのだ。
また、腹が痛くなるほど異物を入れたり出したりするのだろうか。
それを見て笑われると、もうどうにも、自分が惨めで情けなくて
それでいて感じているあたり、救いようのない馬鹿だと自覚するばかり。
「…馬鹿は、マサヤじゃんか…」
ハーバルの仕事上がり。
ロッカーで黒いスーツに着替えながら、イツキは小さく呟く。
嫌な「仕事」を二つ返事で引き受けたのは、黒川の為では無い。
自暴自棄、という訳でも無いが……
酷いことでも納得出来ないことでも、何でも
目の前で起こることにいちいち、感情を揺さぶられるのに、飽きてしまった。
それに、それを試そうとしている黒川の意図も見え見えで、面白くない。
外に出ると、朝は降っていなかった雨がパラパラと落ち、道路を濡らしていた。
湿った空気と不快感に
イツキは何故だか、ふふふ、と笑った。
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