2021年07月02日
イツキの言葉・3
しばらく間があいて、黒川はイツキをチラリと伺い見る。
イツキは静かに微笑んでいる様子。どうやら一通り、話は終わったようだ。
あまり他人への関心の無い黒川にも、なんとなく…イツキの言いたい事は解った。
人の気持ちなぞ、はっきり理路整然と片付けられるものではない。
その都度その都度、自分自身を納得させながら、どうにかバランスを取りながら生きている。
それがほんの些細な切っ掛けで、崩れることもあるのだ。
あの夜。
不意に姿を消したイツキに、黒川が動揺し
今までの黒川の世界が、色を変えてしまったように。
崩して、壊れて、新しいものへと変わって行くには
少々時間も、戸惑いも、必要なのだろう。
「……そうか。……そうだな。
……レノンの事は、一先ず、置いておけ。あれは本当に、何でもない。
お前には、…まあ、酷いコトもしたが、今は違うだろう?
あまり簡単に、ヤケを起こすな…」
「……もう、平気」
イツキは顔をあげ、黒川の方を向き、正面から見つめる。
いつも傍にいたというのに
こんなに近くできちんと顔を見たのは、何故だか久しぶりな気がする。
「…俺も変だったけど、マサヤも変になるんだって解って、ちょっと安心した。
マサヤが、こんなに俺の事好きなのも、ビックリした」
「……ああ、…あ?」
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