2021年08月20日
自棄酒
「……フラれたって事っすかね?フラれたって。いや、まだ告ってもいなかったですけどね。
いや、まあ、別に好きとかそんなんとか、そんなんじゃないんですけど。
第一、男じゃないっすか。オトコ。俺、そういう趣味じゃないんで」
関は、イツキの為に予約をしてイタリアンの店に茗荷谷を呼び出し、解りやすく自棄酒を煽っていた。
飲みやすい白ワインをガブガブ流し込み、早々に出来上がる。
「でも、アレ、絶対、脈アリの感じだったんっすよ。にこーって笑って、ボディタッチして…
……付き合っている人がいるって……女?…男?
俺、たぶらかされたって奴?…遊ばれたんすかねー??」
空になったグラスに空になったボトルを注ぐ。
居酒屋のノリで関は店員を呼び止め、すかさず茗荷谷が、水のお替わりを頼む。
「まあ、イツキくんて雰囲気があるから……勘違いしてしまいそうだけどね。
たぶらかされたの、遊ばれたの、…そんな事じゃなかったでしょ?
イツキくん、年上の方のお付き合いしてるらしいけど、色々難しいようだよ。
まだ若いし、落ち込んで荒れて…は、仕方ないでしょ。
…今回、お相手の方とは上手く行ったみたいだし…良かったじゃない」
オトナの物言いに関は茗荷谷をチラリと伺う。
茗荷谷との付き合いは長いが、こんな風に、色恋に対して余裕のある事を言う奴だっただろうか。
「…何?…主任。ずいぶん、アレじゃないっすか?
って言うか、話し、詳しいっすね。…何で…?」
「……いや、……ミカさんがそう言っていて…」
「………ふーん?」
そう言って関は、新しく置かれたグラスの水を一気に飲み干して
イツキの未練を断ち切るように、ふうと大きく、ため息をついた。
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