2021年09月01日
西崎戦・4
「…片田のジジイはモーロクして駄目だな。ハンコ一つに一時間掛かる」
黒川は愚痴をこぼしながら、持ち帰った封筒を西崎に手渡す。
西崎は少し驚いたままの顔でそれを受け取り、黒川とイツキの顔を交互に見やる。
部屋に入る前に、話しが聞こえただろうか。
まあ、あれだけ身体を密着させ詰め寄っていたのだ、聞こえずとも、大体の所は解るだろう。
イツキは、するりと西崎から距離を取り、ふふと笑う。
微妙な間合いに、黒川が訝しむように顔を上げる。
「……何だ?」
「ううん。この間の、平塚会長の、……迷惑掛けちゃったかなって話」
「ああ、そうだな」
椅子の背もたれをギイと鳴らして、黒川は、事も無げに言う。
西崎にしてみればイツキは「仕事を投げ出し逃げた奴」。反省の色が見えないのが腹立たしい。
「社長。社長はコイツに甘いですよ。前の小野寺会長の時だって
後始末が大変だったじゃないですか。一度ちゃんと、立場ってモンを解らせた方が…」
「…そうだな」
黒川は、もう一度、椅子の背もたれを逸らせ、ふうと大きくため息を付く。
確かに、立場を解らせた方が、後々の為にも良いだろう。
「西崎、あのな…」
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