2021年09月27日
グレーゾーン
黒川はぎょっとした顔を見せ
それから慌てて取り繕う……風にも見える。
「……一仕事させて、戻って来た所だ。相変わらず大騒ぎの奴でな…」
「…ふぅん?」
イツキはソファに着いていた手を、何か汚い物でも触ってしまったかのように、ヒラヒラと振る。
「……ああ。濡れているかも知れん。……水を引っくり返していたから……」
黒川の言葉はすべて言い訳に聞こえる。
嘘か本当の事かは、まあ、どちらでも構わない。
どちらにせよ、レノンは、犯されて来たのだ。
イツキが思うのはただただ、レノンへの、同情だった。
レノンにいわれもない悪態をつかれたことは……怒りよりも、痛ましかった。
彼にも、彼の事情があって、こんな事になっているのだとは思うが
それが、ココで受ける酷い扱いの救いになる訳ではない。
たとえ、自分の身代わりに、こんな「仕事」をさせられているのだとしても
もうそれを代わってやることは出来ない。
解っている。
一番悪いのは、こんな「仕事」を回してくる男なのだ。
「……さてと」
黒川は掛かって来た電話に2、3返事をして、作業を終わらせる。
椅子から立ち上がり、上着を羽織り、出掛けるぞとイツキを促す。
「……浮かない顔だな、イツキ。……妬いているのか?」
半ば軽口でそんな事を言う黒川を、イツキは冷ややかな目線で見上げるだけだった。
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