2021年09月28日

複雑なイツキ








「仕方がないだろう。そういうサービスを望む客がいる以上。
…今まで通りお前がやると言うなら話は別だが…」

「しないよ。別に、何がどうって言ってないでしょ?」




夕食にと訪れたモツ焼き屋。

レノンに仕事をさせる事に不満が無いと言うなら、その膨れっ面をどうにかしろと、
黒川は言いかけるのだが、とりあえず、止める。
鉄板の上の野菜をヘラで返し、ビールを飲む。



「それに…前に言ったが、あいつは駄目だ。一向に良くならん。
西崎の所にやって、鉄砲玉にでもした方がいい」

「ふぅん」



イツキは明後日の方を向き、鼻で答え、ビールをがぶ飲みする。
その態度に黒川も、少々辟易する。




「あのなあ、イツキ」

「…そうだね。お仕事頑張ってね、って…簡単に言える事じゃないでしょ。
俺がしてきた事だって、思い出しちゃうじゃん。
マサヤ、相当、酷かったんだから」

「…まあ、そうだな」

「だからって、……仕事、代われる訳もないし。
レノンくんに優しくしてあげて、とも…言えないし」





同情と、そしてやはり多少の嫉妬と。
それを気取られたくなくて、イツキは


鉄板の上の焼き上がった肉を片端から口に放り込んだ。






posted by 白黒ぼたん at 23:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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