2021年10月15日

気になる相手








 
同じ部署の仲間内で飲んでいた茗荷谷だったが
少し離れたところの席にミカとイツキの姿を見つけると

つい、そちらばかりを伺ってしまう。




「…茗荷谷さん、次、何飲みますか?…茗荷谷さん?」
「あ。…ハイ。……えっ?」



問いかけにも上の空。
とりあえず、同じ日本酒の熱燗を頼み、手酌しで煽った。



『…向こうの席って、ハーバルさんだよね。あそこの店員さん、男の子も女の子もカワイイよね』
『あの2人って、付き合ってんのかね?さっきトイレに行くのに傍、通ったらさ
エライ、顔近づけてて…、なんか、話しててさ…』



グループ内でもそんな会話が聞こえ、茗荷谷ははっとなる。
顔を上げ、辺りを見回し、慌てて視線を逸らせ、また酒を飲んで

何故自分が慌てているのか、不思議に思う。




気にかけ、姿を追っているのは

ミカなのか、イツキなのか。

すでに茗荷谷には解らなくなっていた。














「……ますか?……マネージャー?」
「……え?」
「…次、何飲みます?」


仕事上がり。いつもの居酒屋。
茗荷谷は気心の知れた仲間数名と、軽く飲みに来ていた。


「ああ。…同じもので…」
「日本酒、熱燗ですね。……つーか」


男は店員に追加注文を頼み、それから
酷く重要な内緒話をするように、茗荷谷に顔を近づける。



「マネージャー、向こう、見過ぎです」
「……いや。そんな事はないよ…」
「ハーバルさんですよね。あの2人。マネージャー、ガン見じゃないっすか」



そう指摘されて、茗荷谷は慌てて視線を逸らせる。
確かに、店の奥にミカとイツキの姿見を見つけてからは、

少し、そちらに気を取られていたかも知れない。

店員がテーブルに飲み物を置く。男は酒を茗荷谷に注ぐ。




「…オレ、さっきトイレに行くのに向こう通って…
…なんだかキャッキャ、キャッキャ、楽しそうに盛り上がってましたよ。
あの2人って、付き合ってるんですかねぇ?」

「…ええっ、いや、まさか。そんな事は無いだろう…」





茗荷谷は明らかに動揺した様子で、手元の酒をぐいっと一気に煽る。

そして、気になっているのは

イツキなのか、ミカなのか、どちらなのだろうかと…悩んだ。







posted by 白黒ぼたん at 23:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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