2021年10月17日
いやがらせ
「…来なくても良かったのに…」
「なんだよ。俺が来たら迷惑か」
「…迷惑じゃ…ないけどさ…」
ミカとの楽しい飲みが終わりに近づいた頃。
イツキのケータイに黒川から連絡が入る。
『なになになに?』とミカは興味深々身を乗り出し、
イツキは非常に気まずい様子で声を潜める。
百貨店近くのこの店で飲んで帰ると、話しはしていたのだけど。
『……もう終わりにするトコだよ。……いいよ、迎えなんて来なくて。
………えっ、もうお店の前にいるの?』
たまたまか偶然か嫌がらせか知らないが、諸用で車を走らせていた黒川が
店の前まで来たと言う。
イツキは慌てて、会計を済ませて、ミカに詫び、店を後にする。
賑やかな繁華街。明らかに邪魔な場所に停められた黒塗りのヤクザ車。
イツキの背中を見送りながら、ミカは思わず、ひゅーと声を上げた。
「……仕事仲間はオンナか。ふふ。挨拶でもすれば良かったかな?」
「やめてよ。マサヤ。あんまり…こっちに、来ないで欲しい…」
「うん?何か悪さでもしているのか?」
半分馬鹿にした様子の黒川を、イツキはチラリと横目で睨む。
「……俺とマサヤのこと、ミカちゃんは知ってるんだし。
…なんか、照れちゃうじゃん。恥ずかしいよ…」
唇を尖らせ、もじもじと、イツキはそんな事を言う。
黒川は思わず顔を緩め、危うく、赤信号を見落としそうになった。
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