2021年10月22日
懲りない男
黒川が部屋に戻って来たのは深夜0時過ぎ。
イツキがもう寝ようと、洗面所で歯を磨いている時だった。
少々、酒の匂いをさせ、台所で水を一杯飲む。
洗面所から出て来たイツキと鉢合わせた。
「おかえり。俺、もう、寝るよ」
「…お前、今日、三橋に会ったのか?」
「…三橋さん。…事務所の前ですれ違ったよ」
「……ふぅん」
何か可笑しいのか、ただの酔っ払いなのか、黒川はニヤニヤと笑う。
当然イツキは、良い気はしない。
「……まさか、マサヤ。話、通した訳じゃないよね?」
「何の話だよ」
「……仕事。……三橋さん、マサヤに聞くって…言ってたし……」
「ああ。電話があったぜ。……まあ、あいつには借りもあるからなぁ……」
そう言う黒川に、イツキは一瞬、以前のような……臓物が冷え込む感覚を覚える。
紆余曲折アレコレあって、もう、以前のような事は無いとは思うのだけど。
「……しない…でしょ?……もう、俺」
「したくないんだろう?」
「……。させないでしょ?マサヤ」
「…お前がそう言うなら、な」
黒川が、どこか小馬鹿にしたような嫌な笑い方をするので
イツキは、ふんと大きく鼻息を鳴らし、巣箱へと入って行った。
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