2021年10月31日

ホテル紫苑・3







細く開いた扉からレノンが顔を覗かせる。
照明が付いていないせいもあるが、酷く、顔色が悪く見える。


「……なんで、…あんたが…ここにいるんだよ…」
「佐野っちに呼ばれたんだよ。いいから、とりあえず、出よ?」
「………なか…に……」


レノンの声はごくごく小さく、消え入りそうなものだった。
威勢の良い子という印象だっただけに、その差がさらに悲壮さを増す。
今までの自分を全て打ち壊され、踏み躙られる事を…されたのだろうなと想像がつく。

自分も、そうだったのだから。



「……中に、ローター、…入れられて……まだ、…出なくて…」
「…今は、お腹、痛い?」
「…いたくない」
「じゃ、大丈夫。そのうち、おトイレで出ちゃうから」





奥深くまで入ったコードレスの玩具が取り出せないのだと、困るレノンに
問題無いと、経験者のイツキはニコリと笑って言う。

扉の隙間からバスタオルを差し出すと

ようやく、それを身体に巻いて、レノンが風呂場から出て来た。









posted by 白黒ぼたん at 22:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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