2022年01月08日

心の奥









この日、佐野は黒川の事務所に呼び出されて
先日の一件の話をされ、少々、殴られた。
佐野の判断でイツキをホテルに連れ出し
挙句、目を離した隙に攫われたのだ。仕方ない。

ついでに今日は運転手だと、車であちこちを回らせ、こき使い
最後に、イツキの仕事場に向かう。
黒川の迎えに嫌な顔を見せるイツキを、構わず、車に乗せ
後部座席に並び、これみよがしに肩まで抱いてみせるのは

イツキを好きにして良いのは自分だけだという
解り易いアピールだった。



イツキは佐野の顔にある痕が、殴られたものだと気付いていたが
どうにも、気軽に話しかけられない雰囲気だった。
ルームミラー越しに目が合っても、佐野は他所他所しく視線を外す。

『もう、お前は、イツキに関わるな。昔とは違う』

殴られ、そう言われた言葉が、耳に残っていた。






佐野は
確かに、イツキには悪かったなと、反省はしていた。
黒川に叱責されるのも当然だと思っていた。


けれど、やはりどこか…心の奥の奥の隅の暗がりでは
イツキと一番近いのは自分だと思っていた。

イツキが一番辛く、滅茶苦茶な時期に、傍にいてやったのは俺だ
黒川が何と言おうが、イツキと俺は特別な仲なのだと、信じていた。






posted by 白黒ぼたん at 22:31 | TrackBack(0) | 日記
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