2022年01月21日

昔話・4









佐野とイツキの仲は、黒川公認だった。
黒川にしてみれば、汚れたイツキの後始末、中を、洗う、ついで。
その手間賃、ぐらいの感覚なのだろうと思う。


普通に過ごしていれば、中学3年生の歳。
当然、家にも居場所がないイツキは、佐野のアパートに身を寄せることも多かった。
狭くてボロい木像アパートで、一つしか残って無かったインスタントラーメンを
分け合って食べていた時などは、まるで、訳ありの恋人同士のようで
佐野は、満更でも無かった。





『…俺、この後…仕事なんだ……』
『うん?…紫苑か?……また迎えに行ってやるよ』
『ううん。今日は別の所、連れて行かれるみたい。……人が…いっぱいいるんだって……』


イツキは事もなげにそう呟いて、少し、寂しそうに笑う。
すべてを納得し、受け入れているとはいえ、嫌なものは嫌だろう。

本当に黒川は、何故、ここまで酷い仕事をイツキに回すのだろうかと思う。
余程、金払いがいいのか…。それとも、いっそ、イツキが憎いのか…と、思ったりもする。


そんな事を考えている最中に、黒川から電話が入り、佐野の心臓が止まりかける。




『………イツキと一緒か?』
『……あ、…いや、……あ、…………ハイ』
『……あまり飯を食わせるなよ、この後全部、出すからな。はは。
……黒スーツを着せて、事務所に連れて来い』
『はい』




電話を切ると隣のイツキは内容を察しているのか、わざと床に寝転んで、駄々をこねる振りをする。

その上から覆いかぶさり、抱き締めてやるのだけど


たった数分、そうやっていただけ。


腕の中からイツキは小さな声で、「…もう、行かなきゃ」と言うのだった。





posted by 白黒ぼたん at 13:20 | TrackBack(0) | 日記
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