2022年01月26日

昔話・6









黒川とイツキを後部座席に乗せて、佐野は車を出す。
先ほどの愚痴は聞かれていなかったかと、鏡越しに、後の様子を伺う。

イツキは程よく酔っ払っているようだ。黒川の肩にもたれかかり
黒川はご機嫌のようだ。視線が合いそうになる。
佐野は慌てて前に向き直り、まあ大丈夫だろうと、運転に集中する。





この光景も、何度か見たと、佐野は思う。
イツキの『仕事』の後。黒川と一緒にいるところに迎えに行った。
イツキは今みたいに酔っ払っているか、仕事に疲れて憔悴しているかで
黒川に身体を預け、黒川はそれを抱き止める。







『……マサヤ。……おれ、もう、……いや。……しごと、したくない…』

消え入りそうなイツキの声。
どんなに酷い目に遭わされても、普段は泣き言を言わないけれど
ごくごくたまに、2人きりの時に………こんな時の佐野はいないも同然だから………
イツキは黒川に懇願する。

『……なんで、おれに…しごと、させるの?』
『……うん?』

甘えた声で泣き、見上げるイツキを抱く、黒川は
どこか楽しそうで、嬉しそうだった。

『……お前はヤられている時が一番イイ顔をするからな…』






そんな事を言う黒川は、やっぱり酷いと思う。





 
posted by 白黒ぼたん at 23:41 | TrackBack(0) | 日記
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