2022年01月28日

昔話・最終話










鏡越しに映るイツキと黒川はぴたりと身体を寄せ合い
まるで世界に2人きりしか居ないようで。
甘い言葉も囁く声も、息も、空気さえ……もはや必要がない。

昔、見た景色と、今、見える景色が重なる。
佐野はハンドルを握る手に、奇妙な汗をかく。



この2人は、結局。昔も今も、そう変わらないのかも知れない。
どう自分が画策しようと、間に入る余地など、ありはしないのだ。
解っているのに、つい忘れて、近寄り過ぎて、また思い知らされる。

距離を取るのは難し過ぎる。
黒川は業務上のボスだし、イツキとは、深く付き合い過ぎた。








やがて車は黒川のマンション前に着く。
黒川は酔っ払いのイツキの腕を引き、車を降りる。


「…佐野。今日はこのまま帰っていいぞ、西崎には言ってある」
「……了解っす…」


黒川は今日の手間賃だと、スーツの内ポケットから数枚の万券を出し、佐野に渡す。
顔を上げたイツキはニコリと笑い、じゃあねと佐野に手を振った。







「……結局、どうしたって離れらんないのは……俺も一緒だよなぁ…」




佐野は小さな声で呟きながら、部屋に帰る二人の背中を見送った。












posted by 白黒ぼたん at 20:10 | TrackBack(0) | 日記
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/189300777
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック