2022年01月31日

ヤバイイツキ







「こんにちは」
「おう、イツキ。久しぶりだな。なんだ?ヤられに来たのか?」



イツキが西崎の事務所に入った途端に、西崎の声が掛かる。
商品を値踏みするように上から下まで睨め付け、ニヤニヤと笑う。



「…違います。マサヤのお遣いです。西崎さん。
昨日の書類にハンコが無かったって。契約書の2ページ目。
あと、ここに押してあるの、ミトメじゃなくて実印だって」

「……ハァ?…なんだよ、佐野。確認しろって言っただろう!」



その作業の担当は佐野だったようで、西崎は部屋の隅にいた佐野を怒鳴りつける。
佐野は慌てて立ち上がり、替えの書類をガサガサとやる。



「すぐ、出来ます? 俺、貰って来いって言われてて…」
「ああ。すぐすぐ。…待ちがてら、ちょっと遊ぶか?」
「遊びませんよ」



相変わらずの軽口をさらりとかわして、イツキは、ふふと笑う。



「あと、横浜で使ってファイルが欲しいんですって。黄色の表紙の」
「…あ、ああ。あれな。…そっちの書庫の一番上にあるぜ」



言われてイツキは書庫に向かい、一番上の棚に手を伸ばす。
届くか、届かないか、ギリギリの高さ。目当てのファイルに指先を引っ掛けるも、取れない様子。

ぴょんと跳ね、「あっ」と小さな声を漏らし、悔しそうに唇を尖らせる。
もう一度、手を伸ばす。袖口から白い手首が覗く。



「……ほらよ」



見兼ねて、西崎がファイルを取ってやると、イツキは喜び
「ありがとうございます」と素直に頭を下げた。








用事を終え、イツキが帰ると
西崎は佐野に向かい、深妙な顔つきで

「……イツキは、…ヤバイな。…よく解らんが、……なんだかな」

と言うのだった。





posted by 白黒ぼたん at 23:48 | TrackBack(0) | 日記
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