2022年02月09日

居酒屋会合










その日、黒川は仕事を早めに切り上げて
イツキを連れて事務所の裏手にある居酒屋に来ていた。
鶏の唐揚げとメンチカツとイカリングを注文するイツキに
「見るだけで胸ヤケがする」と、黒川は鼻で笑う。



「……揚げものって、俺、ウチで出来るかな?」
「止めておけ。火事でも起こす気か」
「もうちょっと、ご飯、作れるようになりたいんだよね」
「主婦かよ。料理教室にでも通うか?ははは」



黒川はテーブルに置かれた瓶のビールを2つのグラスに注ぐ。
相変わらず小馬鹿にしたような物言いだが、満更嫌でも無いようだ。

お疲れ、と軽くグラスを鳴らして、ビールを喉に流し
突き出しの小鉢に箸を付ける。







「……うん?……何だ?」

軽い振動が電話の着信を告げ、黒川はスマホを耳にやる。
イツキは少し気にしながら、運ばれた唐揚げにレモンを絞る。

「…ああ。…イツキと一緒に来ている。……ああ、構わないぜ」



短いやり取りだけで電話は切れた。
黒川が顔を上げると、ちょうどイツキと視線が合った。





「イツキ。レモン、絞ったのか?」
「こっち半分だけだよ。…電話、なんだったの?」
「一ノ宮がな…来るってよ…」
「……え?」




少し業務連絡があるのだと言う。
普段なら黒川もまだ事務所にいる時間なのだ、まあ仕方がないだろう。
イツキも一ノ宮ならばと、顔を緩ませる。

やがて店の引き戸がガラガラと開き、
暖簾を潜り一ノ宮と、もう一人誰かが、中に入ってきた。








posted by 白黒ぼたん at 23:00 | TrackBack(0) | 日記
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