2022年02月12日

居酒屋会合・2











「申し訳ありません。お食事の席にお邪魔してしまって…」

やって来た一ノ宮はそう言って頭を下げる。
黒川は当然、連れがいることを知っていたので、ふんと鼻を鳴らすだけ。
イツキは少し驚き、「…あっ」と声をあげる。


一ノ宮の連れは、レノンだった。
相変わらず太々しい顔付きをしていたが、一応、ペコリを頭を下げた。



「レノン君が、イツキ君と話がしたいと言っていたので…」
「まあ、別に。…突っ立ってないで座れ。食いながら話せばいい」
「では。失礼します。えーと、私が社長の隣に行きましょうか」



4人掛けテーブルに、黒川と一ノ宮は並び。
黒川の斜向かいに座っていたイツキは一ノ宮の正面。
イツキの隣り座ったレノンは、黒川の正面になる。




妙なな緊張感が漂う。




黒川は、イツキとのプライベートな時間に水を刺され、多少、機嫌を損ねてはいたが
問題は無い程度。
一ノ宮との食事はいつもの事なのだが

ただの「商品」であるレノンと、こう言った場を持つことは無く
これ以上、親しげに馴れ合う気も無い。


レノンの方も、黒川は嫌な雇い主。乱暴で横暴で非道。
人間らしい心を持ち合わせていないと思っていたのだが
目の前に置かれた山盛りの鳥の唐揚げを見ると、ああ、人なのだな、と少し思う。


イツキは、この状況はどういう事なのだろうかと戸惑う。
レノンの状況は気の毒には思うが、自分もとばっちりを受けている。
元凶の男は、労い言葉など、掛けそうもない。
とりあえず手元のグラスが空になり、辺りをキョロキョロと伺う。


一ノ宮は穏やかに微笑み、注文を取りに来た店員に
追加のビールとグラスをもう一つ。レノンにはウーロン茶を頼んだ。







posted by 白黒ぼたん at 23:41 | TrackBack(0) | 日記
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