2022年02月14日

居酒屋会合・3









レノンは「仕事」の相談や金の精算やらで度々事務所に顔を出していた。
先日、イツキが、自分と人違いで連れ去られた話は、佐野から聞いて知っていた

『どうせボンヤリ突っ立ってたんだろ。そんなの、俺のせいじゃない』

と言ってはみたものの…やはり、
あの時は自分の身体を気遣い、ホテルに来てくれていたのだ。
多少は……悪かったなと、気になっていた。





レノンが黒川の事務所に行くと、そこには一ノ宮が一人で作業をしていた。
いつも黒川と一緒にいるこの物静かな男は、レノンはそう嫌いでは無かった。

事務所に来た要件は一ノ宮でも事足りたが……レノンは何か言いたげに少し間を置く。
聞けば、イツキの一件を気にしていると言うので、ならば直接…と、黒川とイツキがいる居酒屋に連れて来たのだ。






「…では、私どももご相伴に預かりましょうか。…ああ、店員さん、取り皿を頂けますか?
あと、揚げ出し豆腐とほっけの開き。…レノンくんはご飯ものがいいかな。

はい。イツキくん、ビールです。社長はもう、日本酒にされますか?」


四人顔を突き合わせ微妙な空気の中、一ノ宮は相変わらず穏やかにあれこれを仕切る。

実を言えば……レノンに話をさせるためにここに連れて来てやった、というよりは

このメンバーで集まったら何が起こるのだろうという、ちょっとした悪戯心があったのかも知れない。





「ありがとうございます。一ノ宮さん。……えーと。…レノンくんが一緒で、びっくりしました…」
「…みなで仲良く食事をする…という間柄でも無いのでしょうが、……まあ、こんな機会でも無ければゆっくり話も出来ないのかなと思いまして。…ね、レノンくん?」




一ノ宮はレノンに取り皿と箸を渡し、水を向ける。
レノンは、まだこの場に慣れていないようで、誰とも視線を合わせないようにしながら
「…あ、いや…」と口籠った。







posted by 白黒ぼたん at 16:00 | TrackBack(0) | 日記
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