2022年03月06日

思惑・3










黒川は、レストルームでイツキが立てる水音を忌々しく聞く。
直接まで食事をしていたのだから気になるのも仕方がないが、それは自分も同じで。
コトに及ぶ直前に、あれやこれやと水を差す。
興醒めするのも甚だしい。自分を、舐めているのか、とすら思う。 


イツキの我儘には、多少の目は瞑って来た。
生意気を言うのは可愛いものだし、それを聞くのは大した苦でもないのだが


やはり、今一度、きちんと、躾なければいけないだろうと思っていた。





水音が止み、パタンと音がして、イツキがレストルームから出て来た。
同時に、部屋の明かりが全て落とされる。イツキが壁面のスイッチを触ったのだ。



「……消しすぎだ。馬鹿。少し残せ…」



煌々と光る照明の下でイツキを広げるのも良かった。
それで無くとも、ベッド周りの淡い光りくらいは残すものだろう。こんな暗闇では泣き顔も見れない。
今の黒川にはどんな些細な事でも、イツキが自分の意に反することが気に入らなかった。
不機嫌そうにちっと舌打ちする。

黒川はベッドの宮棚に手をやり、調光パネルを探す。
どうにか手探りで戻って来たイツキは、ベッドに上がり
黒川に、しがみ付く。




「…マサヤ、明かり、……や」
「…見えなさ過ぎだろうが」
「…いい。見えなくて。……なんか、俺、恥ずかしくて…」





そんな事を言って

イツキは黒川に回した手に力を込める。

先程まで、シャツや下着だけは身に付けていたのだが

今は無く、全裸のようだ。







posted by 白黒ぼたん at 22:03 | TrackBack(0) | 日記
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