2022年03月22日

雨の日・1








昼過ぎから降り出した雨はいつの間にか本降りになり道路を濡らす。
一ノ宮は車のワイパーを少し早くし、スモールライトを灯す。
助手席に投げた書類をちらりと見遣り、今日の仕事が終わった事を確認する。
この近辺には黒川が管理している土地や建物がいくつかあり、定期的にそれを見て回っているのだ。

道路沿いにあるラブホテルもその一つだ。勝手が利くこともあり、ヤバい内容の「仕事」に使っている。
今日は確か、レノンが来ている筈だと…何気に目をやると、
出入り口から少し離れたところを、傘も差さずに歩くレノンの姿が目に止まった。




「………レノンくん?…………どうしたんですか?」


一ノ宮は車を脇に停め、驚き、声を掛ける。
見ればすでに髪の毛も、肩口も、雨に濡れている。
レノンは初め、誰が声を掛けて来たのか解らないようで警戒していたのだが
それが一ノ宮だと解ると少し安堵し、…それでも、不貞腐れたように顔を背ける。


「………別に。………帰るだけだよ」
「…帰るって……、一人ですか?……ああ、いや、とにかく車に乗りなさい」
「……いいよ」
「良くはありません。とにかく、乗って」




一ノ宮はわざわざ車を降り、妙な意地を張るレノンの腕を掴み、半ば強引に車に乗せる。

雨の中、濡れて、一人で帰す訳にはいかないだろう。

優しさ、とは少し違う。

なにしろこの少年は今しがた、こちらの命令で、ホテルで売春をして来たところなのだ。

人目に付いては、まずい。






posted by 白黒ぼたん at 21:42 | TrackBack(0) | 日記
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