2022年03月31日
雨の日・4
「レノンくんは…社長が…苦手ですか?……まあ、そう、得意な方もいないのでしょうが…」
「苦手………って言うか…、嫌い。ムカつく。あいつ……」
「…………はは…」
自分で聞いておいて予想通りの答えに、一ノ宮は思わず笑う。
レノンが今の状況になるまでに、おそらく、黒川からはかなりの圧が掛かったのだろう。
……借金で雁字搦めにし、身体を売ればと安易に持ちかけ、品定めにと2、3度抱き、後は……売る。
事細かに具体的には聞いてはいないが、想像するには易い。
この流れで、黒川に好意を抱くものは、まあいないだろう。
「………やり方はかなり強引ですがね。まあ、そこは…ビジネスと割り切って……。それを差し引いても、社長は、………この世界ではまだお優しい方ですよ」
曖昧な言葉だが、おそらく、褒め言葉だろう。
レノンにも雰囲気は伝わるが、それでも怪訝な表情で一ノ宮を見る。
一ノ宮は
普段からあまり、自分の事を語るタイプではない。
今日は少し、おしゃべりだなと……自分でも思っている。
…反抗心と探究心とが混じり合ったレノンの視線が、どうにも…重たい湿度と雨音とに紛れて…
一ノ宮のガードを緩めているようだ。
「…ギブアンドテイクなので…仕事の状況については何も申しませんが。…レノンくんにとって悪い話では無かったでしょう? それ以上に一応、気にも掛けていますし……。
根は………優しい方ですよ。………私の方が、よほど悪い。
彼はそれを、代わりに引き受けてくれているんです」
「…………意味わかんない。……わざと嫌な奴になってるって事?……なんで?
………ああ、役割分担的な?……飴と鞭、みたいな?」
意外と的確なレノンの答えに、一ノ宮は笑う。
「まあ、そんな感じです」
「……それって、誰得?……何作戦さ?……意味わかんね……」
「ははは…、確かに……」
posted by 白黒ぼたん at 14:35
| TrackBack(0)
| 日記
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/189434425
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。
この記事へのトラックバック
http://blog.sakura.ne.jp/tb/189434425
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。
この記事へのトラックバック