2022年04月04日
雨の日・6
「ちょっとした喧嘩って何?ヤクザの抗争ってやつ?
どんな怪我?……死にかけたの?」
「……まあ、そんな所です。…さ、もうお喋りはお終いです…」
さすがに一ノ宮も辟易とし、もう止めにしましょうと手の平を前に出す。
どうにも、屈託のない様子でぐいぐいと押されると…拒むタイミングを見失う。
レノンはまだ聞きたいことがあるようで、目を丸くさせ、一ノ宮を見る。
次の質問に口を開き掛け……一度つぐみ、………少し、言葉を探す。
「昔は黒川と同じだったって……、強引に…ヤルって事?……その、
……あんなコトを?………あんたも?」
興味本位だけだった視線に、少し不安の色が滲む。
余程、酷い事をされて来たのだろう。それは知っている。
「……昔は。……多少は。………今はそれも全て社長にお任せです」
「そんなの、任せられるモンなの? 綺麗サッパリ?」
「ええ」
一ノ宮は穏やかに微笑む。
それは営業用の一ノ宮の癖で、別にレノンを安心させようとか誤魔化そうとか、そんな意味はない。
けれど、レノンには、その笑顔が違うものに思えた。
「………一ノ宮さんって、好きな人いる?……そういう気持ちも、無くなっちゃったの?」
レノンの問いに、今度は一ノ宮が口を開き掛け……またすぐに閉じてしまった。
答えが出なかった訳ではないが、答える必要も無かっただろう。
「……子供が。……あまり過ぎた事を聞くものではありませんよ」
一ノ宮は変わらずに微笑んでいたが、その語気はやや強いものだった。
posted by 白黒ぼたん at 19:00
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