2022年04月12日

雨の夕方・1








レノンと佐野が慌ただしく事務所を出て行き、
一ノ宮はやれやれと肩で息をつき、コーヒーカップを手に、ソファから腰を上げる。

窓側に立ち、外の様子を眺める。
雨は強さを増したようだ。ガラスに雨粒が当たり筋を作って流れて行く。



「…まだまだ、怖いもの知らず、と言うところでしょうか…」



つい先刻のレノンの言動を思い出したのか、一ノ宮そう呟いて笑う。
やや失礼な物言いは、驚きこそしても、嫌という程ではない。
無邪気さも無鉄砲さも今の自分には無いもので、酷く新鮮に思う。


少しお喋りが過ぎたとは思うが、そんな勢いでも無ければ、なかなか記憶の扉は開かない。




「……10年前…?……いや、もう少し経ちますか……あれから……」




すでに冷たくなったコーヒーを啜りながら
一ノ宮は珍しく、昔のことを思い出していた。



中学時代。今のレノンの歳には既に、地元では有名な不良だった。





posted by 白黒ぼたん at 23:31 | TrackBack(0) | 日記
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/189461733
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック