2022年05月13日

イツキの話・3








「…週明けの月曜日から3日間。新幹線の駅のトコにホテル取ってくれるって。
朝、ハーバルの本社に行って、そこから社長さんとあちこち回るだけ。水曜日には帰ってくるよ。
晩御飯の予定とかも…連絡した方がいい?」

「………しなくていい。俺はそこまで過干渉じゃないぞ」

「……そ?」



渋々ながら黒川の許可も得て、イツキはふふふと小さく笑う。
自分が外に出るのを黒川が嫌がることは知っている。
何かトラブルが起きるかも知れない、自分がつい呼び込んでしまうかも知れない。
万が一にもそうなった時でも…うまく対処は出来る。……自信は無いが。




「イツキくんだってもう子供では無いのですから、大丈夫でしょう」

横で成り行きを見守っていた一ノ宮が、ようやく口を挟む。
イツキは「そうそう」と言わんばかりに、頭を二、三縦に振る。


「ああ、向こうは松田氏のホームでしたね。…そう言えば彼、東京の仕事が片付いたので、向こうに戻るとか戻らないとか…」

「………はぁ?」


降って沸いた松田情報に黒川が顔を顰め、一ノ宮を見る。
アレが絡むのも、おそらく、ロクな事はない。
一ノ宮は黒川の気配に気付き、いささか失言だったと言葉を濁す。


「……まあ戻っていたとしても…イツキくんと接触は無いでしょう、多分…。」
「……どうだか。あいつはどこでも出てくるからな。石鹸屋のどこかで話が漏れているんだろうよ」




むしろ先に連絡をして、身辺警護でもさせるかと思う。

結局のところその花代が、高くついてしまうのかも知れないけれど。





posted by 白黒ぼたん at 17:58 | TrackBack(0) | 日記
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