2022年05月23日
月曜日の昼
ハーバル本社へは電車でも約3時間ほど。
慣れてしまえばそう遠くはない気もする。
一番最初にこちらに来た時は在来線を乗り継ぎ乗り継ぎ…で、いやに遠くに来てしまったと思ったものだが…
新幹線を使えばあっという間だ。遠足気分で浮かれて買った弁当は、半分も食べられなかった。
もうじき到着と言う案内に驚き、イツキは広げた荷物を片付ける。
「……おお、イツキくん。久しぶり」
「社長さん。お久しぶりです」
新幹線を降りたところで、ハーバルの社長が迎えに来てくれていた。
ホテルはこの近くに取ってあるが、とりあえずここから車で本社に向かい、一つ用事を片付け
夜にはまた、こちらに戻ってくる予定。
「すみません、わざわざ迎えに来てもらっちゃって…。あ、コレ、東京のお土産です」
社長とは電話で話はするものの、直接会うのは数ヶ月ぶりだった。
イツキは、ミカに持たされた土産物を手渡し、ぺこりとお辞儀をする。
よくよく考えれば、考えなくとも……ほぼ身元不明のイツキを雇い、住むところまで面倒を見て
今では大事な東京での仕事を任せてくれているのだ。
いくら世間に疎いイツキでも、本当に、感謝している。
「いやいや、こっちの用事もあったから良いんだよ。どう、元気にしてる?
ああ、このバナナのやつ美味いんだよね。家内も好きでね。ありがとう」
社長はシワのある顔をさらにシワくちゃにして笑う。
白髪混じりの頭、スーツの上から作業用のジャケットを羽織った姿。
穏やかで優しそうな物腰は、どこぞの社長とはまるで違うものだった。
posted by 白黒ぼたん at 20:54
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