2022年06月05日

火曜日の昼







午前中は小山田商店で打合せ。
新しい商品のパッケージなどを決める。
ハーバルにいた小森という女性は数ヶ月前に退職したそうで、
それ以来、何をするにも人手が足りないと社長がぼやいていた。



「もう、都内のデパート向けなんて、訳がわかんないよ。
小森さんは東京でお勤めだったからさ、そういうのも相談出来たんだけどさ。
ウチの石鹸なんて、受けるのかねぇ…」

「ハーバルの商品、すごく良いですよ。香りが自然だって、喜んで貰ってます。
パッケージも、シンプルなのが逆に、清潔感があって……」


昼食時。道路沿いの定食屋でイツキと社長はそんな話をする。
老齢の社長は、実を言えばこれ以上、商売の手を広げるつもりもないのだが
まあ何というか周りの圧もあり、渋々、販路拡大といった様子。


「あんまり大きくしちゃってもねぇ。おれ、困っちゃう」
「いいと思いますよ。良い物だから、ちゃんと受け入れて貰ってるんですよ」




お茶を飲みながら普通に話され、普通に話し、イツキは何か、安心感を覚える。

自分が頼られ、一人前の人として接して貰えているという事もある。

黒川の事務所で見かける、生きるか死ぬかの瀬戸際の事業主とは違う、というのもある。

ちゃんと真面目に考えよう、この恩義のあるおじさんのために何かしてあげよう、とイツキは真剣に思っていた。




「…カミさんがさ、せっかくなんだから乗っかりなって、五月蝿くってさ。
松田さんの口利きで工場も大きくしちゃったしね。……ああ、イツキくんって
松田さんとそんなに親しい感じだった? 東京でも何か繋がりがあったの?」

「ええと。……俺の知ってる人と…仕事仲間だった…的な感じですかね」




ハーバルの社長に言われ、イツキは曖昧に笑って誤魔化した。






『お昼ご飯はカツ煮定食。松田さんに会っちゃった』

空いた時間に、一応、黒川に連絡を入れる。黒川からの返信は短く一言

『やるなよ』

だった。





posted by 白黒ぼたん at 22:40 | TrackBack(0) | 日記
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