2022年06月10日

火曜日の夜








イツキのその日の午後の仕事は、あまり、良いものでは無かった。



社長と一緒に挨拶に立ち寄った会社の男は、明らかにイツキ達を軽く見ていた。
その男は…小山というのだが…小山は元々都内の大企業に勤めていたらしく
未だにそれを鼻にかけ、自慢し、地元の小さな会社を小馬鹿にする癖があった。


『…ハーバルさんねぇ。そんなに張り切って、手、広げなくても良いんじゃないですか?
ハーブの石鹸って言っても、そこら辺のお婆ちゃんが庭先で作った草でしょ?
それが、銀座? 銀座に店、構えて……よくやるよねぇ。
……しかも担当者が…このお兄ちゃんでしょ?』



小山はイツキをジロジロと眺め、ふんと鼻で笑う。
社長は、自分達が小さい会社なのも解っているし、都内進出が分不相応なのも知っている。
そして、なにぶん人が良いので、穏やかに笑ってその場をいなす。


『……ははは。まあ、勉強のつもりでやらせて貰っています。…彼もね、若いけど、よく頑張っているんですよ。
銀座のデパートなんて、私みたいな爺さんじゃ勤まりませんからね』

『ふん。女の好きそうな商品だからね。こんな女みたいな兄ちゃんが丁度いいのかね』



そう言って、また、笑う。
イツキは女のようだからと、性的対象に見られることには…まあ慣れていたのだけど
今日のような言われ様には免疫がなく、何とも…居心地の悪い不愉快な気持ちになった。







その夜は、イツキと黒川の電話が繋がった。


「……今日はちょっと、疲れちゃった。やっぱり、仕事って、大変だよね…」
『……まあ、良いことばかりでも無いだろうよ、…お疲れさん』
「………マサヤ…」
『………ああ、……悪い、………いま……』



珍しく労いの言葉を掛ける黒川だったが


黒川はどこか、賑やかな店の中で話をしているようで…時々わっと楽しげな歓声が上がり
それ以上、話を続けることは出来なかった。
 




posted by 白黒ぼたん at 20:35 | TrackBack(0) | 日記
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