2022年06月21日
水曜日の夜・2
この宴席はハーバルが主催では無かったが
ハーバルの新規事業のお披露目なども兼ねて、関係業者が開いてくれたものだった。
地元の寿司屋の二階の座敷。呼ばれたのは20名ほどだろうか。
社長はあちこちに挨拶に周り、イツキもそれにくっついて、ヨロシクオネガイシマスと
頭を下げる。
穏やかな、和気藹々とした席だったが……あの男の傍だけは違った。
「……まったく、酒も料理も大した事もない。
…赤坂に、俺が贔屓にしている店があるが、違うよなぁ、格ってモンがさ。
まあ、こんな所と比べても話になんないけどさ…」
小山はイツキを隣に座らせ、どうでも良い愚痴や自慢を垂れ流す。
そのくせ、少し立場が上の人物を見掛けると、すぐに腰を上げ、擦り寄りおべっかを使う。
イツキは当然この男が気に入らなかったが、一応取り引き先の人物で無下に扱うことも出来ない。
適当に微笑み、スゴイデスネーと相槌を打ち、早く時間が過ぎることだけを待つ。
「……閣僚の先生方のパーティーの時はホテルで300人規模で……」
話しながら、空になったグラスをイツキに向け、酒を注げと催促する。
少しでもタイミングが合わなければ舌打ちし「……気が利かないな、こんなの基本でしょ」と言う。
ふと、部屋の奥にいたハーバルの社長と目が合う。
社長はイツキに、……面倒な役を引き受けて貰って申し訳ない、と言う風に
手を前で小さく切り、頭を下げていた。
それでもまだここまでは、イツキは、冷静でいられた。
posted by 白黒ぼたん at 23:50
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